
- 小久江
- 今回の京都でのイベントは、どういう流れで開催する事に?
- 高坂
- はい。実はこの数年、北丹波農園と高坂鶏を中心に、料理人や研究家と一般の方々がジャンルを越えて集まる機会がしばしばありまして、その反応がとても興味深かったんです。私は生産者として、これは何か大きい流れを作るきっかけになるのではと思いました。物作りをする物と、目利きの出来るシェフや専門家がいて、そこに消費者が集うという所から。実際、東京で先日このイベントを行ったところ、ずいぶんと興味を持っていただきました。色々な生産者や料理人、マスコミのOBなど、かなりの人が集まりました。これを一つの物語として続けていく事で、新しい流れが生まれ、食の安全・安心に繋がっていけばと思って第2回の開催を決めました。
- 小久江
- なるほど。
- 高坂
- そもそも、私の活動が行政の方に興味を持っていただけたのは、かつて小久江さんに一言、はげましも込めた高い鶏の評価をいただいたのがきっかけでした。こうした連携はとても重要です。生産者だけでは成り立ち得ない。安全や安心は、きちんとした物作りが基本ですが、それを「食を知る人」に支えていただくことが大きな広がりとなりました。同じく料理人だって、どんな気持ちでどういう人間が作っているのか、消費者に知ってもらう事は大切ですよね。「人間関係の深い繋がり=相手を思い深く知る事」こそが、安心を産むと思う。
- 小久江
- そう思いますね。実は、私どもの神戸フランス料理研究会が行っている『シェフの集い』も根底には同じ気持ちがあります。毎年テーマを決めて(2006年は「スパイス」がテーマ) JAや県、卸売市場などにも協力を得て、神戸の料理人がこれに沿った料理を披露する一種のお祭ですが、食への安全・安心が叫ばれる中、消費者の不安を払拭できるきっかけになって欲しいと思って、生産者と料理人が必死で、赤字覚悟でやっていますよ(笑)。
- 高坂
- 毎年続けておられるのですか?
- 小久江
- はい、お陰さまで毎年楽しみにしてく下さる方もいて、今年9回目になります。
- 高坂
- 9回とはすごいですね。
- 小久江
- はい、毎年続いていくのは嬉しい限りです。ユニセフに納めるチャリティも行っているんですよ。いつかフランス料理だけでなく、もっと色々なジャンルの人が集まってやれる日がくれば良いなと思っています。
- 高坂
- ぜひ実現していただきたいですね。
- 小久江
- それに最近、兵庫県と一緒になって農産物や加工品の認証制度を企画しはじめています。小さな農家や生産者で良質な物を作る人たちを、スローフード的な考え方で守ろうという制度でして、生産履歴の表示などを指導したりもします。私は料理人の立場でこれに参加しているんです。是非、高坂鶏も登録して下さい。
- 高坂
- ありがとうございます。 生産者と流通の間に入って考えるパイプになってくれる人は必要ですね。
- 小久江
- 個人的に、神戸の西区でオーガニックに20年来携わっておられる生産者の方とも、5~6年前から関係を持ってサポートしあっています。我々としては、自分達の希望を伝えられるというメリットがあるし、農家の側でも、今後何を作るべきかの参考になる。あとは流通だけですね。せっかくいい生産者がいるのだから、その橋渡しになる流れを最後は作っていきたいです。
- 高坂
- シェフが修行しておられたフランスの「アラン・シャペル」で、そういうことについて学ばれた部分はありましたか?
- 小久江
- はい。「アラン・シャペル」は地元のものを大切にして、それを地元で料理にするという意味で、まさに地産地消の地方レストランです。それをいかに一流の料理として提供するか、徹底的なプロのこだわりがそこにはありました。食材はもちろん重要で、そのためにシャペルさん自ら生産者との関係をとても大切にしていましたよ。
- 高坂
- 当時の日本人スタッフは如何でしたか?いまや高名な方ばかりですが。
- 小久江
- そうですね、我々の時代はフランス料理について情報も少なく、最初は知らない事だらけでしたが、日本人として恥ずかしくないようにと、皆かなり一生懸命でした。後に続く日本人のことも考えて、いい加減な事はできないと、責任を感じていましたね。
- 高坂
- そういう点、現代の日本人との差について客観的にどう思われますか?
- 小久江
- 今は何でもある時代だから、我々のように何も無い幼少期を経験したものと違って、感謝の気持ちやそれに対するプレッシャーなど持ちにくいかもしれませんね。急激な社会変化によって、「自由」というのが勘違いされてしまった部分があるのだと思います。これには我々大人も責任を感じる必要がありますが、今は何でもありすぎて、逆に昔からある大事なものを失ってしまったかもしれない。特に精神的な部分で。
- 高坂
- それは大きいですね。何もないというのも困るが、便利になるということは何か大事なものを失うことなんです。
- 小久江
- シャペル氏然り、フランスでは幸い今もそうなのですが、料理人も農業=生産がどんなことかを知っています。それを知らないと食材に対する感謝も生まれない。食べ物に対する感謝がないのは一番問題です。これから次世代にそういう考え方を残していきたいという思いは、我々世代みんなが思っているところです。
- 高坂
- 本当に、そのあたりを提言していけるような、今後の活動になればいいなと思っています。ぜひ、これからも宜しくお願い致します。今日はありがとうございました。







